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ゲショゲショ!

その他虐待
わが友Budeさんにささげる
今日は親友の結婚式だ。ここに三日の雨がうそのように晴れ渡り、親友の門出にふさわしい。
前原一征「すばらしい天気ですね。てるてる坊主がきいたのかなあ。」
Bude「さあ、ハネムーンだ。」
親友のBudeさんが颯爽とオープンカーに乗り込む。
前原一征「てるてる坊主は車の後ろにたくさん付けておいたよ、キミの前途が晴れ渡るように。」
Budeさんと硬い握手を交わしたのち出発だ。
オープンカーは音も無く走る。(最近流行の電気自動車)その後を・・・

テルテル坊主「げしょげしょ~ぴいぴい」
テルテル坊主「げしょ~げしゅおぴぎゃあ。」(どうしてこんなめにあうんでげしょ~)
テルテル坊主、いやミニイカ娘はアスファルトにたたきつけれ、空き菅な音にぶつかりさんざんです。
空港につくころにはどうなっちゃうんでしょう。

前原一征「がんばれよ~。」
新郎新婦の笑顔とミニイカ娘の情けない声を残して旅立っていった。 

<writed by 前原一征様>
edited by仂様 at
テルテルボウズ

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                 ∥
                 ∥
             ,.-――――‐  、
             /      ,.-――┴- 、
           /   |   /: : l、: : : ;l: : : : :\
.          /   :! ./: : :、: :!_\;/ _V\ : |`
         〈 ___V: : : :|∧|      __`|∨
        ` ̄丁 |: |:l :| __   〃⌒V|     早く天気良くならなイカ!
           ヽ|: NV:!〃⌒__ //}|
            /: :{_|: :|//f´   ヽ}  八
            _/: :/:/ : ト .丶___,ノイ\_:\
      __,/: :_;/: /,(``'‐---‐'``)  !: |__
      |: : : : :/__/: ;.イ: /~γ,、 ヽ、ハ  └┐:|__
    /: : | ̄ 「: :__∧  / .(丿| |ゝノ ハ   \/
.     \/  _,|: :|_〉: : /    ハ    ハ
        \/―/          .ハ
            /           .ハ
           ./             ハ
          /              .ハ
          ⌒ヽ、    ,,,,....._    _ノ
             ``~''``   ``'```` 

首に掛かった縄を全力で締めてあげよう!







その結果がこれwww


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         〈 ___V: : : :|∧|      `|∨
        ` ̄丁 |: |:l :| ○   ○ |     
           ヽ|: NV:!〃 __ //}|    ぶら~ん
            /: :{_|: :|//f´   ヽ}  八
            _/: :/:/ : ト .丶___,ノイ\_:\
      __,/: :_;/: /,(``'U---‐'``)  !: |__
      |: : : : :/__/: ;.イ: /~γ,、 ヽ、ハ  └┐:|__
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.     \/  _,|: :|_〉: : /    ハ    ハ
        \/―/          .ハ
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           ./             ハ
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             ``~''``   ``'```` 


                ***
                ***←首吊り死体特有の汚物
                *** 

edited by仂様 at
シバかなイカ?
きょうは良いお天気。きょうのお昼は大好物のえびシュウマイ。

さあ、えびシュウマイを食べよう。

おや、なあああ、えびシュウマイがなくなってる~。
なんと、からっぽのお皿にはミニイカがニコニコ顔で寝転んでいる。
ミニイカ「げしょげしょっぴ。」(人間さん、もっとえびがほしいでゲショ。)
ぼくは冷静にミニイカをつかむと庭先に出た。
そこに丁度良い杭と、都合よく紐が落ちていた。
ぼく「さあ、きょうのお昼ご飯の責任を取ってもらうね。」
ミニイカ「げしょ~。ぴぴぴ。」(えびちょうだいよ~)
ぼくは杭にミニイカをしっかり縛りつけた。はえたたきをフルスイング。
ミニイカ「げしょげしょぴ、げえっしょ~。」(そんなこといいからえびちょうだよ~)

ばしっ

ミニイカ「げっししょおおお。」
ぼくはまるでしまりの無いミニイカのにやけ面に正義の一撃を叩き込んだ。
ミニイカ「ぎゃあ、ぎゃあ、ぴいぴい。」(なにするんでゲショか、わたしをいじめるでゲショ)
ばし、ばっし、ばし。ミニイカをしばく。
まぬけな大口をあけて泣いている。
ミニイカ「あいい、あいい、ぴいぴい。」(えーん、えーん、でげしょ)
ミニイカのやつ、泣きながらこちらを伺っているぞ。むかつくやつめ。
ぼく「もっと、おしおきが必要だな。」
ばし、ばっし、ばし。さらにミニイカをしばく。
こんどは目を閉じ、歯を食いしばり必死でたえる。
ぼく「どうだ、少しは反省・・・できてないようだな。」
ミニイカ「ううう、いいいい。」
なんとミニイカは貧弱な触手をむけ威嚇してきた。
ばし、ばっし、ばし。もっとミニイカをしばく。
出血なのか墨を吹きだした。
ぼく「そろそろいいだろう・・・・うわあ。」
なんとミニイカのやつ僕にすみを吹きかけた。お気に入りのビンテージデニムに墨の花が咲く。 

ぼく「このやろう、もう許さん。」
ミニイカは、アカンべーをしている。その舌をめがけて一撃。
ばし、ばっし、ばし、ばっし、ばし。ひたすらミニイカをしばく。
ぼろぼろになっていくミニイカ、涙、と鼻水と、飛び散る墨がこっけいだ。
ミニイカ「ぴゅーい・・・。」
ぼく「ざまあみろ。くそいかが。」
ボロ雑巾のようになったミニイカを庭の花壇に埋めた。そういえば去年、ミニイカに花をあらされたことがあったな。
ミニイカの死骸に土をかけ、そのうえにぼくの大好きなチューリップの球根を置いた。
今年は特にきれいな花が咲きそうな予感がする。

<writed by nana様>
edited by仂様 at
【混入】4
俺はミニイカが嫌いじゃない。
だが好きかと聞かれれば、答えはNO。あっさりと言い切れる。
今、俺の目の前のテーブルで気絶したまま横たわっているミニイカをどう処理するか。
そんな俺がミニイカを好きな訳はなかった。だが、玩具としては好きなのかもしれない。
元々生き物を虐待する趣味などは持ち合わせていなかったが、このミニイカだけはどうも別だった。

俺が購入したイカ娘ブルーレイのパッケージに混入されていた、フィギュアならぬ本物のミニイカ。
まさか本物が入っているなんて手違いもいい所で、生き物を飼うつもりもない俺にはひたすら迷惑だった。
ミニイカといえば沿岸部では害獣指定されているし、飼えばかかる食費は尋常ではない。
だからこそ手軽に投棄してしまおうと何度か試みたが、こうして俺の元まで戻ってきている。
死ぬような状況でも中々死にはせず、事実先程洗濯機にかけても死にはしなかった。
さて、いよいよこうなったら俺の手で確実に始末するしかないか、と思案を始めた時だった。

『…ピョ……ホユゥ?…フヮァ…ゲショ、ゲショゲショ?』
間抜けな声を上げながらミニイカが目を開き、ゆっくりと身を起こし辺りを見回し出す。
俺はその様子に思わず舌打ちする。
――そのまま寝てれば楽に始末できたのに。
内心そう思いながらも起き上がったミニイカをとりあえず眺める。
洗濯機の中でかなりのダメージを受けている筈なのに、今は既に痣一つ残ってはいない。
また、洗濯機に入った事で服やイカ帽子の汚れは綺麗に落ち、今のミニイカは元気そのものに見えた。
『ゲショ、ゲショゲショゲッショ、ゲショゲショピ?』
ミニイカはそんな俺の視線を受けてか、テーブルの上を走って俺の近くに寄って来ると何事か鳴いている。
何を訴えているか全く分からないのだが、その表情や仕草は友好的そのもので笑みすら浮かべている。
――コイツはさっき俺に洗濯機に落とされた事を忘れているのだろうか?
あまりの脳天気加減に軽く引く感じすら覚えながらミニイカを見ていると、何やら腹に手を当てている。
――グゥ~…
それは間違いなく空腹を示すサインと音。
『……フェ…フエーー、アエー、アエー』
空腹音と共に泣き出すミニイカ。
噂に聞くほどの大音量ではなかったが、この甲高い声は耳に響く。
だがそれよりも

「おいおい、マジかよ……」
俺にしてみれば信じられない。
洗濯機に放り込んで散々痛い目に合わせた相手に、こうも易々と媚を売る、というか餌をねだっている。
図々しいという次元など通り越して半ば理解を超えた生き物のようにすら俺には思えてきた。
これがミニイカの狩りというヤツなのか?と思いつつも、無論餌などやる気はないので黙って眺めていると
『…ピゥ?……アェ……アエェェェェ、アエエエエェェェェ、ギェビィー』
いよいよミニイカも空腹に耐えられなくなってきたのか、ねだる声にも必死さが滲み出す。
それでも勿論餌をくれてやるつもりなど毛頭ないので、俺は一度台所へ行くと小瓶を片手に戻る。
『ホユゥ?…ギェビィ?』
海老でも出てくると思っていたのだろうか。ミニイカは俺の持つ小瓶を不思議そうに眺めて首を傾げる。

『ビャッ!?…ハワワワワ、ビャッ、ビャビャッ!』
俺は手早くミニイカの襟首を摘み上げ、何事かと抗議するミニイカの鳴き声など素知らぬ振りでそのままポイと小瓶の中にミニイカを放り込み、コルクで栓をする。
『ピィーーー!ピユゥゥゥ!』
小瓶の中でかなり甲高い声で喚いてはいるが、瓶の中だけあって音はかなり小さい。
これでミニイカがいくら泣き喚いてもあまり気にせずに済むだろう。
だが耳障りな事には変わりないので、少し静かにしていて貰おうと俺は小瓶を思い切りシェイクする。
瓶の内側からミニイカが瓶の内面に打ち付けられる衝撃が俺の手に何度も伝わる。
『ブェッ!ギャッ!ビィッ!ピャッ!ビャァッ!』
中から聞える鳴き声を少しの間楽しんだ俺は、声のしなくなった小瓶をテーブルに置く。
『……ピャ……ピャェェ…ゲ、ショ…』
既に意識は無いのだろうが、瓶の中ではミニイカが光を無くした目で仰向けに倒れ微かな声を漏らす。

俺は小瓶の中のミニイカを見ながら、うるさい時はこうして黙らせればいいと思い再び思案する。
折角気絶してくれた事だし、このまま始末してしまうのが良いのではないか、と。
瓶に入れていれば声もあまり外には漏れないし、このままゴミと一緒に出してしまうのも手か?
俺はそんな事を考えながら、インターネットでミニイカの詳しい情報を求めていた。
どうせ始末してしまうミニイカだが興味が湧いたのも事実。始末する前に何か出来ないかと思ったのだ。
そして、ミニイカがどのようにして誕生するのかは未だに謎である、という点に俺は行き着いた。
人間のように?海の生き物のように?一部ではオスがいるという説もあるが、確証はなかった。
だから少し調べてみよう、と俺は思い至る。

そして、俺は小瓶のコルクを抜いた。

(続く) 

edited by仂様 at
【混入】3
俺はミニイカが嫌いじゃない。
だが好きかと聞かれれば即座にNOと言えた。
それは俺の手の中で気絶しているミニイカを見ても明らかだ。
手の中のミニイカに俺は微塵も同情心の類を感じていないからだ。
再生力が異常に高く滅多な事では死なない生態不明の生き物。
俺はそんなミニイカに興味、というより好奇心を持ってしまっていた。
子供が虫を捕まえ、観察し、最後には興味の余りにバラしてゴミか標本にしてしまう――
――そんな好奇心だった。

「…ん……何か臭いな…」
玄関を潜り家に戻った俺の鼻を微かな臭いが突く。
その正体はすぐに分かった。ミニイカだ。
だが俺はすぐに違和感に気付く。生臭いような臭いではなかったからだ。
ミニイカと言えどイカの類。それなら磯臭いというか海産物的な臭いがする筈だ。
しかしこのミニイカから臭うのはいわゆる土埃というかゴミ臭い臭いだった。
それもその筈だろう。ここまで地面から5cmの高さの世界を歩いて来たんだ。
ミニイカの身は傷ひとつなく再生されているものの、泥や埃に塗れて汚れ放題だった。

「……汚ねえなぁ…洗うか」
俺は一人呟くとミニイカを握ったまま洗面所へと向かう。
そして洗面台でミニイカを洗おうと思った時、ふと俺の目に入った物があった。それは――
――洗濯機
そこにこのミニイカを放り込んだらどうなるだろう?
泳げないらしいから溺れるのは確実。だがこの生命力に再生力だ。
――死なないんじゃないか?
どっちにしてもただの拾い物。金持ちのように金を出してわざわざ買った物じゃない。
これで死ぬならそれもまた一興。いや、むしろ俺の興味本位のお遊びから逃げられるのだから幸せか?
そんな事を考えながらも俺は水を張り洗剤を入れて泡立った洗濯機へミニイカを投じた。

『ハボガボボボッ!ゲピェッ!ガボボッ!ハギャゴボガバッ!!』
唸る洗濯機にポチャンと小さなシケた水音がしたのとほぼ同時だった。
ミニイカは俺の期待通り泡に塗れながら水面で足掻き状況を理解できないまま慌て出した。
洗濯機の起こす水流と回転に巻き込まれ何度となく水面から姿を消すミニイカ。
そして水面に現れて息継ぎを――する暇もなく再び泡に飲まれ消えるミニイカの姿。
俺にはそれが滑稽なダンスのようにしか思えず、どうにも笑えてくる。
勿論ミニイカが必死なのは百も承知だ。自分でも酷い事をしているのは重々承知だ。
だがミニイカがこの状況で死ぬのか?それとも何故か生き残れるのか?俺はそこにしか興味がなかった。
だから――

『ガボボボッ!!ギャピゴボッ!ギャビ――』
偶然に浮き上がり水面から必死に足掻いて俺を見上げ、助けを請うように叫ぶミニイカを見ながら―
――俺はゆっくりと洗濯機の蓋を閉じた。 



――それからしばらくして。洗濯機が軽快なメロディと共に洗濯終了の合図を告げる。
洗濯が終わるまでの間に軽い朝飯を済ませた俺は、いざ洗濯機の蓋に手をかける。
さて、ミニイカは果たして――

『――……ヴェ゙ェ゙ェ゙……ビャ……ビャェ゙ェ゙……』
いた。まだ生きてやがる。
洗い、濯ぎ、脱水と一連の工程を受けたにも関わらず、息も絶え絶えっぽいが生きてはいる。
口から洗剤入りの泡を時々吐き出し、喉を潰されたような声で醜く鳴くミニイカがそこにはいた。
ミニイカの汚れは綺麗に流されたものの、体は痣だらけでその様子は今にも死にそうだった。
だが皮肉だった。そんな様子であるにも関わらず痣は徐々に消え始め、声にも張りが戻り始める。
こんなに死にそうな、いや、死ぬ筈の目にあってもミニイカの生命力は死を拒むのだ。

『…ヒャェェェ…アェェェェ…』
洗濯機の底から仰向けに寝転んだまま俺を見上げるミニイカは、もう張りの戻った声で鳴き始める。
流石に洗濯機のような深さでは自力で脱出できないから助けを求めるのか?
だが俺はここで驚く。伸びる、伸びる伸びる、触手は楽に洗濯機から顔を出す程に伸びる!
が、そこまでだった。かなりの長さに伸びた触手だが、何故か宙を漂うようにフニャフニャと彷徨うばかり。

『ピィィィ…ピェェェェ…』
ミニイカは洗濯機の底で俺を見上げて鳴くばかり。
いや、こんだけ伸びるなら洗濯機の縁に触手引っ掛けて出ろよ。
そう思いつつも埒が明かないと、俺は触手を掴んで引っ張り上げようとした時だった。
触手が俺の腕に絡み付き、ミニイカはまるでエレベーターで運ばれるかのようにスルスルと昇って来た。
そして――

『…フュゥ……ゲソゲソ、ゲソッ♪』
やっと出られた。助けてくれてありがとう、とでも言わんばかりの笑顔をミニイカは俺に向けた。
そして俺の腕を伝わり洗濯機の縁に立つと、改めて洗濯機の底を興味深そうにしげしげと眺め出す。
何というべきなのだろう。このミニイカは賢いし愛嬌もある。ペットとして売れば絶対に買い手が付くだろう。
だがバカだ。途轍もなく救いようのないバカだ。人間を疑うという事を知らないのか?
俺がその洗濯機に放り込んだんだという事にまるで気が付いていない。
洗濯機を興味深げに眺めるその様子。時折俺を見て振り撒く笑顔。
まるで無警戒で隙だらけ。頭は悪くない筈なのにどうしてここまでバカなのか。俺はふと思い出す――

――ミニイカ娘は希望を捨て切れません

それはミニイカの飼育に関して説明されていたサイトを見た時の一文だった。
ミニイカというのは最初こそ警戒心が強いものの慣れると異常なまでに人懐こくなるらしい。
それが反面図々しさを生み出す原因でもあるのだが、基本的に飼い主を全面的に信用するようになる。
つまりミニイカは懐いた飼い主に対して必ず無責任で多大な期待をする間抜けな生き物、という事だ。
外でコイツを拾った時の態度いい、ここまで帰ってきた根強い帰巣本能といい、確かに大した健気さだ。
飼い主への希望を捨て切れないから、最後までちゃんと面倒を見ろ、というその一文を改めて思い出す。
そんな時ふと俺を見上げるミニイカと目線が合う。そしてミニイカは満面の笑顔を俺に向け―― 

『ブギェッ!!』
ミニイカは顔面を弾かれ再び洗濯機の底へと強かに叩き付けられた。
勿論、俺がデコピンでミニイカの顔面を引っ叩いたからだ。
何故とは問われるまでもなく、俺はその笑顔が腹立たしかったからだ。
余りに無警戒、余りに愚鈍、余りに押し付けがましい信頼、俺はそれを凝縮したような笑顔を砕いた。
当然だろう。ミニイカのその期待は余りに身勝手で我侭以外の何物でもない。
そんなものが降って湧いた俺にとっては迷惑以外の何物でもないのだ。
その余りの能天気さに腹を立てて何が悪いのだろう。これだけ賢い生物なら人間に頼らずとも良い筈だ。
つまりコイツはただ狡賢く楽に生きる為、人間に世話して貰おうと愛嬌を振り撒いていたのだ。
小動物は愛嬌で身を守ると言うが……俺がこの虫に感じるのはまさに虫唾の走るような思いだけだった。

『…ピッ……ピャァァァ、フェ、フゥェェェ!アェェェ!」
洗濯機の底でやっと自分を苦しめた存在が誰なのか認識したミニイカは、先程より大声で泣き喚く。
だがその泣き声は俺には心地良く響いた。
ふざけた笑顔と期待を一時的とは言え打ち砕き、その証拠のように響くミニイカの慟哭は心地良かった。
どうせ俺が甘い顔をすればまたあのバカ丸出しの期待に満ちた笑顔が戻るだろう。
だからこそ「やり甲斐」がある。きっとこれは素晴らしいストレス解消法になるだろう――

――そして俺は歪な笑みを浮かべると、洗濯機の底で喚くミニイカに手を差し伸べてやる。
『ビャ!…フヮァ……ゲショ、ゲショッ、ゲショゲショピ♪』
歓喜の声を上げて俺の手に飛び込み俺を見上げてくるミニイカ。
そのミニイカの喜色満面の笑みを見て俺は確信する。
――コイツは救えねえな
そんな嘲るような笑みを浮かべ、俺は――


『ギャビィィィィッ!!ゲベガバゴボベッ!ギャベボゴボベッ!ハワワワッ!ガバ――」
再び洗濯機にミニイカを放り込み、入ってきた水に溺れ出すミニイカをそのままに蓋を閉じる。
さて、ミニイカがもうひと泳ぎしてる間に次はどうするか考えるか…え?何でまた洗うのかって?

だって、まだゴミ臭かったんだよ。

(続く) 
edited by仂様 at
【ミニイカトイレボール】
【ジャパネットたけるの新製品・ミニイカトイレボール】

「さぁ今日ご紹介しますのは、このかわいいミニイカトイレボールですよー。
ご存知、ミニイカ娘は機嫌が悪くなるとすぐイカ墨を吐くんですが、このイカ墨、実はタダもんじゃないんです。なんと便器にシミついた、あのしつこいおしっこの黄ばみを浄化する作用が発見されました」
『…ふぇー、あぁーい、あぁーい、ギェビビビビビィィィ!!』
「まずは、このうるさいミニイカちゃんを網袋に閉じ込めて…」
『はわわわわ、ひぎぃ!ひぎぇ!ピギッ!』
「このようにギュウギュウに縛り上げます。網袋を食いちぎられないよう、アゴの骨は最初に割っておきましょう」
ぼきっ、カーン☆
『おひょーーー、おごーーーーー』
「あー、このミニイカちゃんも手足をバタバタして元気ですねー」
さ、ちょっと失礼して…カメラさん、ちょっと向こう向いてて下さいね」
ジョパーァ…ジョンベロリンジョンベロリン。
『ゴボゴボ、ブベッ…ビィィッ!』
スゥー…。
「ほら奥さんここよく見て!」
ブブーッ!ピチャピチャピチャ…。
「墨を吐き終えたタイミングで水を流せば…」
ジャー。
『オーゲロゲロ、オーゲロゲロ』
「このとおり!で、気になる餌の問題ですが、繰り返しておしっこ→洗浄を繰り返していくうちに、だんだん精神崩壊して大人しくなりますので何ら心配ないんです!」

「墨を吐かなくなったらお取替えのサイン!捨て方は簡単、トイレの大便器に流すだけ。ほら奥さん見てちょうだい!」
ゴロゴロゴロ、ジョバ~。
『ピィィィィ!…』
「御下品な話、まぁミニイカなんて大きさも大体人間の排泄物と同じサイズですから、トイレに詰まることはありません。安心して下さい!」

「さらに!今なら墨吐かせ用に、このサメ人形もおつけします。そろそろ弱ってきたかなーと思ったら、このサメを網袋に入れれば…」
『ゲゲゲッ!ゲショッ!!』
『グェーッ…』
ぶぱぱぱぱぱ…パタッ。
「最後の最後までイカ墨を絞り切れるスグレモノです!この、捨てミニイカ娘を有効利用した、環境にもお財布にも優しいミニイカトイレボール、4月発売開始!」

この後、テレビを見たカスタマーから
「お前だけ虐待を楽しんで何なんだ!早く発売しなイカ!!」
「ウチの飼いミニイカもとっとと処分したいから、網袋だけでも先に売り出せ」
「近頃湘南海岸からミニイカ娘がいなくなったのはお前らのせいか!少しは虐待用に残しておけバカモン!」
と、クレーム?の電話が鳴りやまなかったそうです。
(終わりでゲショ♪) 
edited by仂様 at
無題
今日ミニイカを見たので虐める事にした。
とり会えず3匹捕まえて持ち帰った
そしてまな板に載せる
まず1匹目に塩をかけた
すると、ゲショォゲショォォオオと、苦しみだした
目をパッチリと開きゲショゲショ言う姿は不可解極まりない
包丁を持ち首を叩き切った
すると静かになった
2匹目は強くツマんだ
すると、ギェショオオオオオオと泣いたのでゴミ箱に投げ捨てた
3匹目は・・・焼くか
油を引いたフライパンにミニイカを入れた
するとフライパンの壁を這い上がろうとするので
蓋をした。
すると最初はゲショゲショ言っていたのが、ゲショォ・・・ゲショォ・・・
と言う感じになってきた
明日もやろうかなと思いつつフライパンの中身をゴミ箱に捨てた 

<writed by 桜田ジュソ様>
edited by仂様 at
「白い絨毯」

とある地方の繁華街、宝飾品店のウィンドを溜息をつきながら見いるママの脇で、ちっちゃな娘ちゃんは手持ち無沙汰。
おやつのえびせんをポリポリ食べながら不貞腐れています。
そこへ娘ちゃんの前に、もっとちっちゃな女の子が現れました。妖精さんでしょうか?
「わぁ、かわいい♪ママ、妖精さんだよ」
「ふうん、そう。じゃあミクちゃん、妖精さんに遊んでもらって」
娘ちゃんの言葉にも一瞥も与えず生返事のママ、ここで一目振り返ればこの後の悲劇を避けられたものを、陳列棚の
ネックレスから目が離せなくなってしまっています。
ママが構ってくれないので、娘ちゃんは妖精さんとオシャベリを始めました。
「妖精さん、おやつ食べる?」
「ゲショ!ゲショゲショ!!」
娘ちゃんからもらったえびせんをムシャムシャと食べ、「ゲショゲショ、もっと欲しいでゲショ」とばかりにおかわりを
催促する妖精さん。娘ちゃんも面白くなって、おやつのえびせんをどんどんばら撒き始めます。するとどうしたことで
しょう、排水溝の穴からわらわらと現れ始めた妖精さんたち。最初は喜んでいた娘ちゃんも、少し怖くなってきました。
「ごめんなさい、おやつはもう無いわ」
困惑状態の娘ちゃんの言葉にお構い無しに、いつのまにやら50匹を超えた妖精さんたちは、構わずゲショゲショと鳴きながら、
『もっと食べ物を寄越さなイカ!』
『私はちっともお腹いっぱいになってないでゲショ!』
『くれないなら、お前を食べるでゲショ!!』
「ママーーーー!!!!」
娘ちゃんの悲鳴に、我に返ったママ。振り返ると可愛い娘ちゃんの全身に、忌まわしい害獣、ミニイカ娘が齧りつき、
食べようとしているではありませんか!
「キャーーーッ!!!!」


この町では、野良ミニイカ娘の異常繁殖が問題化していた。数年前に、ペットとして人気を博したミニイカ娘であったが、
飼育の煩雑さから飼育放棄する飼い主が続出、それらが野良化したものが、市の中心街に住み着き、繁殖を始めたのだ。
「エビしか食べない」とされていたミニイカ娘も、野良になると繁華街の残飯を漁り、獣肉や野菜でも食べることも
確認されている。

「全く、初めから好き嫌い言わずに何で食っていれば、飼い主に捨てられることも無かっただろうにな」
苦々しくぼやくAに対し、同僚のBが答えた。
「まあ、ミニイカ娘も人間に飼われた時点で、自分は一生エビが食べ続けられると勘違いしちゃうらしいな。何を根拠に
あの生き物がそう考えるようになったのかは分からんが」
AとBは、この市の市役所の衛生課の職員だ。衛生課では今、市内に棲む野良ミニイカ娘の駆除が至上命令となっている。
その為の効果的な計画を提案し、速やかに議会の可決を経て承認されなければならない。

ミニイカ娘が野良化したのは今に始まったことではない。ただ、毎年少なくとも1度は市に襲来する台風により、
ミニイカ娘の住処となっている下水道が大雨で洪水状態となり、ミニイカ娘の殆どが流され、自然淘汰される、
というパターンを毎年繰り返していた。
ところが昨年から2年連続で同市に台風が襲来せず、結果、下水道に住むミニイカ娘が2年連続で淘汰されず、
異常繁殖する事態となったのだ。

役所も当初は「そのうち何とかなるでしょう」と問題解決を先送りしていたのが、異常繁殖し、下水から地上に進出して
きたミニイカ娘により、飲食店や鮮魚点ではエビを捕食される被害が続出。そればかりではない、無抵抗な人間の幼児や
老人に襲い掛かるミニイカ娘も現れ始め、指や耳を噛み千切られる事件も発生し始めていた。
市役所としては、各家庭や店舗にミニイカ娘用のネズミ捕りを1つずつ配るとか、生ごみ処理の注意を喚起するとか、
ミニイカ娘の死骸1つにつき10円の報奨金を支払うとかの対処を行っていたが、最早その程度の対処では事態が沈静化
しない段階になっていたのだ。

「やれやれ面倒くせえな」
当初はいかにもなお役所感覚で対処していた衛生課の職員たちも、いざ自分の身内まで被害に遭いだすと、復讐心から
本格的にミニイカ娘の徹底駆除に取り組むようになった。
そしてその計画が可決承認され、実行に移す段となったのだ。

「まず下水路に格子や網を嵌めて回って、ミニイカ娘の行動エリアを狭めていってはどうだ?」
「無理だ。成体はともかく、幼体まで防ぐ網を嵌めてたのでは、下水の流れに支障をきたす」
「下水道に毒薬なり毒ガスなりを流せばイチコロじゃないのか?」
「いくら下水とはいえ、毒物を大量に使うのは議会の承認を得られんだろう」
「自衛隊に出動してもらって、火炎放射器で焼き払ってもらえばいいんじゃないか?」
「自衛隊への出動要請はもちろん検討しているが、兵器類の使用は特定団体の反対が激しいぞ」
「ああ、畜生!!ハリウッド映画なら速攻で決着が付くのに、日本の行政は面倒っちいなああ!!」
喧々諤々の議論の果てに、ついに一つの作戦が練り上げられ、実行の運びとなった。

『ゲッショゲショ!この先の右側の土管を通り抜けると、魚市場の下に出られるでゲショ』
『朝ごはんは市場で新鮮なエビを盗み食いするのが最高の贅沢でゲショ』
『地下の下水道を通れば、色んなところに人間やカラスに見つからずに移動できるでゲショ』
ある日の市内の地下下水道で、下水で薄汚れたミニイカ娘達が餌場を求めて移動している。水深の浅いところは何の
躊躇も無くジャブジャブと首まで浸かり、水深の深いところでは土管の壁に触手を這わせ、汚水も壁のぬるぬるも気に
することなく、きつい刺激臭も既に下水の中で生まれた世代にとっては、生まれ着いての環境だ。一時的に大量に流れる
工場排水のポイントとタイミングも把握できているので、最早ミニイカ娘にとって、この下水路での脅威はドブネズミと、
稀に迷い込んだヘビくらいしかない。
―――はずが・・・!?


魚市場に向かうつもりで曲がった下水管の枝路には、ででーーんとサメが待ち構えているではないか!?
『ピュイイイイイイイイ!!サメでゲショ!!逃げるでゲショ!!!』
まさか下水道にサメが!?恐怖に慄いたミニイカ娘達、我先にもと来た土管へ逃げ帰った。
『ゼェゼェ、なんであんなところにサメがいたでゲショ?』
『きっと、私たちの臭いを嗅ぎつけてきたでゲショ』
『あの土管で待ち伏せされたら、市場に行けないじゃなイカ』
『少し遠回りになるけど、違う土管を通って行くでゲショ』
ところが、安全と思われた迂回路にはシャチが睨みを利かせて待ち構えていた!?
『ビャビャアアアアアア!!こっちにはシャチでゲショ!!食べられるでゲショ!!!』
土管の中を一目散に逃げ帰るミニイカ娘たち。気が付けば、下水路の方々から同胞の悲鳴がエコーして鳴り響いていた。

「上手く行きそうだな、この作戦」
下水路に設置した監視カメラから送られる映像を見ながら、Aは満足げに言った。市役所衛生課に置かれたモニターには、
監視カメラが捕らえた、サメやシャチに驚いて逃げ惑うミニイカ娘の姿が映し出されていた。
当たり前の話だが、下水路にサメもシャチも居る訳はない。全て衛生課が手配して設置したオモチャである。綿密な
調査によりミニイカ娘の出没エリアと時間帯を把握し、市内の下水網と照らし合わせて、サメのオモチャを配置したのだ。
本能的にサメやシャチを恐怖するミニイカ娘は、サメの姿を見ただけでオモチャと気付かず一目散に逃げだし、その様子は
下水網の要所要所に設置された監視カメラに映し出され、その個体数も徐々に詳らかにされていく。

「西部A-13ポイント、8時16分、5匹が北から南へ通過しました」
「南部G-16ポイント、8時32分、12匹が西から東へ通過しました。これで累計38匹が西から東へ通過済みです」
モニター監視担当者が、機械的に個体数を読み上げていく。
「北部R-27ポイント、ミニイカ娘の通過が確認取れなくなって1時間経過しました」
「どうやらミニイカ娘はいなくなったようだな。よし、北部R-27ポイントにはサメのおもちゃを置いて、退路を塞いでおけ」
こうして徐々にミニイカ娘の行動エリアを狭めていき、最終的には下水処理場近くの合流ポイントまで追い詰めて、
予め設置してある電気ネットで感電死させて一網打尽にするというのが、この作戦の骨子だ。

『ゲショゲショ、あちこちにサメやシャチが待ち伏せしているでゲショ』
『もうこの下水路も危ないでゲショ、一度地上に出たほうが安全なんじゃなイカ?』
そうして下水路から這い上がって側溝に顔を出したミニイカ娘、いつもなら頭上を覆う側溝蓋が外されており、青空が見える。
『ほゆ?どうしたんでゲショ?・・・・・・・!!!』
考える間もなく、白い帽子を銛が貫いた。
側溝脇で待機していたボランティアスタッフの男が、銛にぶら下がるミニイカ娘の死骸を、忌々しげに見つめていた。
「これで3匹目だ。まだまだこんなもんじゃ気が済まん」
「次は僕にもやらせてよお、僕だって仕返しがしたいんだよお」
少年がボラスタ男性の脇から目を輝かせて覗き込む。その少年の右耳たぶは、ミニイカ娘に齧られた痛々しい傷跡が
残っていた。もう一人のボラスタが、市役所内の本部へ報告する。
「こちら北町3丁目Aブロックの5、ミニイカ娘を1匹仕留めました」
いつものボランティアの募集なら人の集まりも悪いのだが、ミニイカ娘に対する市民の怒りも限界寸前だったのか、
この駆除作戦への応募数は空前のものとなっていた。
「下水路のサメのオモチャが流されないよう、当日は極力水道の利用をお控え下さいますようお願いします」という、
いつもは反感を買いがちな、市民や商店、企業や工場への協力要請も、今回は好意的に受け入れられた。

「東部D-10ポイント、10時7分、122匹が東から西へ通過しました。これで累計538匹が東から西へ通過済みです」
「南部H-11ポイント、10時12分、89匹が南から北へ通過しました。これで累計428匹が南から北へ通過済みです」
「東部D-10ポイントは、これで確認されている全てのミニイカ娘が通過したな。サメのオモチャを置いて封鎖してくれ」
テーブルに広げた市内下水路図に×印や数字を書き込みながら、Aが指示を下した。順調だ。これで予定通り正午頃には
ミニイカ娘を合流ポイントに追い込んで、一網打尽に出来る・・・

「社長、どうします? なにやら役所から『今日は水を流すな』とお達しが来てますけど」
郊外の食品工場、その名も「やっちゃん食品工業」、小学校の体育館の半分くらいの大きさで、日曜出社と思しき社長と
古参社員たちが話し合っている。
「んなこと言われてもなあ、汚水タンクに貯まった汚水もパンク状態だろ?今日にも排水しとかないと、明日から操業
できなくなるぜ」
工場で発生した汚水を排水するには、排水前に市の定める基準に浄化してから流すよう規制されているが、それを完全に
遵守する工場は少なく、この食品工場でも汚水タンクに貯まった汚水をそのまま下水に排水していた。
「ここ数日、役所の職員だか日雇いだかが、下水路をやたらチェックして回ってたろ?あんなことされると臭いのきつい
汚水を流しにくいもんだから、タンクに貯められるだけ貯めてたんだけど、もう限界だよな。今日にも排水してタンクを
空にしないと、こっちは仕事が立ち行かなくなる」
「うちの市で日曜も操業してる工場なんて、無いだろ。ミニイカ娘退治もご苦労なこったが、うち1社が流した程度じゃ、
大した問題になるめえよ。社長、いかがでしょう?下水に汚水を流したところで、すぐにうちに足がつくなんてことも
ないと思いますが?」
しばらく逡巡した後、社長が決断を下した。
「そうだな。やっちまうか」

市内の下水路で右往左往するミニイカ娘の大群。その数はいつしか数万単位になっていた。
『一体どうなっているでゲショ?下水のあちこちにサメやシャチが発生しているでゲショ!』
『きっと私たちの臭いを嗅ぎつけ、海から泳いで来たでゲショ』
『なにか取り囲まれているでゲショ。逃げ道が無いでゲショ』
『そんなはず無いでゲショ!きっとどこかに逃げ道があるはずでゲショ!』
『私たちの生涯が下水でサメに襲われて終わりだなんて、そんなの嫌でゲショ!!』
狭い下水管の中でひしめき合ってゲショゲショビャービャー騒がしいミニイカ娘たち。
そこへ、土管を震わすような地響きが伝わってきた。
『しっ、静かにするでゲショ』
『何の音でゲショか?』
『この音は、水が大量に流れる音じゃなイカ?』
『こっちに来るんじゃなイカ!?』
『危ないでゲショ、一先ず高いところに退避するでゲショ!』
丸い土管の天井の方へ、10本の触手をお互い絡ませ合いつつへばり付く数万のミニイカ娘の群れ、白い帽子部分が
フジツボのようにびっしりと並ぶ異様な光景を作って、流された個体も出たものの、その殆どが何とか汚水の濁流に耐えた。

『ふー、危なかったでゲショ』
『それよりおぬし、見たでゲショか?いま、汚水と一緒にサメも泳いで行ってたでゲショ』
『見たでゲショ。何匹も泳いで行ったでゲショ』
『本当でゲショか?危ないところだったでゲショ、危うく私たち、食べられるところだったでゲショ』
『それより、サメが泳いで行ったということは、水の流れてきた方向を辿れば、そこはサメがもういないということじゃなイカ?』
『言われてみればそうでゲショ』
『きっとそうに違いないでゲショ!水の流れてきたほうへ行けば助かるでゲショ!!』
天井から底に降りたミニイカ娘の大群、我先に放水の源目指して汚水を撥ね散らしながら走り始めた。

市役所のモニタールーム、何台も並ぶモニターを見ていた担当者が、突然の画面の異変に驚きの声を上げた。
「うわああああ!!!何だこれは!!!!」
その声の異様さに、室内の者全員が声の主の方を向いた。
「どうした?何事だ?」
そう訊きつつ、全員モニターを一目見て事態を理解した。
「流すな」と注意勧告したはずの工業排水が、下水路を流れ、モニターに映像を運ぶ監視カメラを呑み込んでしまっているのだ。
「東部F-10ポイント、11ポイント、12ポイント、濁流が通過です」
「東部G-6から18、濁流が通過です」
「東部H、全部濁流に呑まれました」
モニタールームの叫びを聞いて、何事かと駆けつけた衛生課職員、濁流に呑まれた画面を見て、顔から血の気が失せて
いくのを、自分でも自覚できていた。

「この水量は・・・家庭やオフィスのレベルじゃない、どっかの工場だな・・・」
「うーむ・・・サメも流されたと見ていいな・・・」
「ああ・・・となると、ミニイカ娘が通り放題となった・・・」
「畜生!!あともう一歩のところまで追い詰めていたのに!!」
「ここまできて失敗したとなると、世間の声が煩いぞ・・・」
「俺たちの責任問題か?馬鹿な、作戦は上手く行っていた!」
「そうだ、俺たちの失敗じゃない、汚水を流した工場が悪い!」
「その通りだ!工場を突き止めて、行政処分を下すべきだ!!」
「それはいい。ついでに始末書は工場の監督を怠った産業課の奴らに書かせよう!!」
「それは名案だ!俺たちは何も責任取らなくても済むぞ!!ヤッホー!!!」
無責任な雄叫びを上げる衛生課職員たち、モニタールームの監視員たちも「よくある光景」とばかりに気に留める気配は無い。
「ところで、工場排水を流したバカ工場はどこだ?」
「汚水が通過したポイントから推察するに、やっちゃん食品工業じゃないか?」
弛みきった空気が漂い始めた衛生課職員たちの気持ちに水を差すように、監視員が絶望の色を滲ませた声を上げた。
「あー・・・東部F-10ポイントを、ミニイカ娘の大群が通過中です・・・」

『ゲショゲショ、思った通りでゲショ、サメは1匹も居ないでゲショ』
『ちょっと待つでゲショ、向こうに居るのはサメじゃなイカ?』
『そうみたいでゲショ。逃げるでゲショ』
『そこの枝路から地上に出られるでゲショ』
『地上に出ていったんサメから逃れるのが良さそうでゲショ』
そう言って狭い枝路に押し入った数万のミニイカ娘の大群、格子状の蓋に阻まれブツ切りミンチ状態のミニイカ娘を
いくらか出すという犠牲を払いつつも、硬く嵌められた蓋を押しのけて地上に出た。
そこは、さきほどのよっちゃん食品工業の工場内だった。

『ホユゥ?ここは・・・どこでゲショ?』
『どこだか分からないけど、いい臭いがするでゲショ!」
「エビの臭いでゲショ!!この中にエビが居るはずでゲショ!!」
排水溝から湧き出すようにワラワラと現れたミニイカ娘の大群に、日曜出社していた社長たちはビックリ!
「うわ、何だこれ、気持ち悪ぅッ!!」
「何でここからミニイカ娘が出て来るんだよ!!」
「退治してたんじゃないのか!行政は何をやっとるんだ!!」
とりあえず銘々の足元に寄ってきたミニイカ娘を踏み殺して対処するものの、それ以上の勢いで排水溝から現れる
ミニイカ娘の勢いと、脚によじ登り咬みついてくる恐怖から、社員たちも生きた心地がしない。
「お前ら、一先ず作業台に上がれ!!」
社長が号令し、皆ミニイカ娘を振りほどいて、日ごろは冷凍エビ等を作っている作業台上に避難した。
みるみる床が数万のミニイカ娘に埋め尽くされ、ゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショ
ゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショゲショというさざめきと、
汚水の染み付いた刺激臭が工場内を充満していく。

『ゲショゲショ、エビの臭いがするでゲショ』
『どこに隠しているでゲショ?早く見つけるでゲショ』
『台の上からいい臭いがするでゲショ。登ってみるでゲショ』
エビの臭いの染み付いた作業台によじ登ってくるミニイカ娘たち、そうはさせじと社員たちも脱いだ靴で頭を叩き潰して
応戦するが、文字通り多勢に無勢、ついには足の指から噛み千切られる被害者も出始めた。
「ギャー!!社長、助けてえええええええ!!!!」


初老の社長に助けを求めて何になるのか理解に苦しむところであるが、そこは社長もなかなか漢だった。排水溝からの
ミニイカ娘が現れ尽くしたと見ると、作業台にあった分厚い鉄板を排水溝に被せて蓋にした。
不法排水を外部から見られないよう、扉も窓もシャッターも閉ざされ、他には高所の通風孔以外に外部への出口が
開いていない工場、ミニイカ娘にとっては退路を絶たれたに等しい状態だが、そんな状況を冷静に理解している個体は
1匹もいない。みな、エビを求めて工場内を駆けずり回っている。

すると社長は手ごろな鉄材を使って、足元に絡みつく白いミニイカ娘を蹴散らし、冷凍食品作りに欠かせない液化窒素の
ボンベに接続されたパイプを外してまわった。
「社長、何をしているんですか!?」
驚いた社員の問いかけに答える替わりに、社長は液化窒素のバブルをどんどん開けて回った。
「これでも喰らいやがれ!!」
ドバドバとあふれ出す液体窒素、みるみる工場内に溢れ出すとともに、床に蠢くミニイカ娘を瞬間冷凍していった。
『ゲショゲ・・・?』
なにやら湯気のようなものを漂わせながら迫ってくる液体に、触れた瞬間に貧弱な蛇足が芯まで凍りつき、水位が
上がるに比例して自分の体が足元から上まで順番に凍りついていく。
『ギャビャッ?ビャアビャア!!』
何とか脱出を試みようと振り上げた触手のその先が既に凍りつき、使い物にならない。
『何が起こったでゲショ?』
とマジマジと自分の触手の先を見ている間に水かさは増し、手の自由も利かなくなった。
『アビャッ!ビャビャアアアアア!!』
首から上だけ液体の上に出た状態で、皆体の自由が利かず泣き喚くしかすべが無い。断末魔のようにイカ墨を吐き
散らかすも、液化窒素とは大した化学反応も起こさず、ついにミニイカ娘の大群は頭まで水没した。奴らが声を揃える
かのようにして最後に言い放った叫びが、今も耳から離れない。
『ギィエ、エビイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!』

作業台の社員に齧りついていたミニイカ娘も、異常事態に呆然、その隙に社員から次々に液化窒素の海に落としこまれ、
冷凍ミニイカ娘の個数を増やしていった。
ありったけの液化窒素をぶちまけた社長は、急いで作業台に飛び乗ったものの、足の凍傷が酷く、立てる状態にない。
他の社員も足の指やアキレス腱をミニイカ娘に噛み千切られ、歩くこともままなら無い状態だ。
床一面に広がった液化窒素の海はほどなく気化するとして、その後はどうなるだろう。この液化窒素が気化したことにより
発生する窒素と、それによるこの工場内の酸素濃度の低下により、自分たちは酸欠を起こすのではないか?場合によっては、
命を落とすことも・・・そんなことを考えながら、意識が朦朧としてきた・・・工場の扉を叩く音が微かに聞こえる・・・
「やっちゃん食品工業さん、警察のものですが・・・」

その後のことを少し話そう。
衛生課の報告を受けてやっちゃん食品工業を訪れた警察官により、同工場の社長及び社員は一命を取り留めた。とはいえ、
社長は凍傷に社員は足の指などを失う重症、しかも一人は酸欠による中枢神経障害を残した。
ミニイカ娘は、凍死したものに加え酸欠死したものや社員たちに直接踏み殺されたものなどを含めると、その個体数は
4万を超えた。市内の下水網にそれだけの数のミニイカ娘が生息していたことを知り、市民は震え上がった。
やっちゃん食品工業の汚水の不法投棄の件は、ミニイカ娘を殲滅した功績でうやむやになり、「今後は適法に汚水処理を
行うように」との厳重注意に留まった。社長は「ミニイカ娘を殲滅した英雄」として一躍市の名士となり、工場の売上も
増えたため、汚水処理の設備投資に難儀することは無かった。
市議会では「『ノーモア・ミニイカ娘の街』宣言」なるものが採択され、食用・ペット用を問わず、生きた状態での
ミニイカ娘の市内への持ち込みが禁止となった。しかし、ミニイカ娘を珍味として有り難がる好事家も多く、闇市場での
ミニイカ娘の売買が行なわれており、これを根絶するのは困難とされている。

(終わり)

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「イカのポーラちゃん」

夜遅く、仕事が終わって家に帰ると、缶ビール片手にテレビのスイッチを入れた。テレビは朝から晩まで、明日から始まる
ワールドカップの話題で持ちきりだ。そして、日本代表チームの第1試合は明日行われる。俺が今見ている番組も、
ワールドカップ特集だ。
俺はしがない番組制作会社の一社員。今シーズンはワールドカップの番組企画で方々のテレビ局に売り込みまわったが、
いずれもライバル会社に競り落とされた。中でも今俺が見ている番組は、俺が直接企画立案に携わって競り負けただけに、
競り落とした番組がどんな内容なのか、尋常ならざる関心があった。

ピンクの衣装を着た女性司会者の当たり障りのない進行で番組は進み、目玉企画だった「日本代表 勝敗予想」の
コーナーが始まった。俺の企画を蹴落としたのはどんな企画なんだろう。俺は身を乗り出して画面に見入った。
「それでは目玉企画、イカのポーラちゃんが予想する、明日の日本代表 勝敗占いでーす」
司会の女が無駄に元気な声を上げて視聴者の注意を喚起する。画面の中のスタジオには手品師が水中マジックに使うような
大きな水槽が用意された。水槽は下半分の真ん中に仕切り板が立てられ、片方に日本代表、もう片方には明日の対戦国の
名前が書かれている。

俺は4年前のワールドカップで、蛸のポールとかいうのがドイツ代表チームの全勝敗結果を的中させた話題を思い出した。
これはそのまるパクリか?俺は呆れてテレビを見ていると、この番組で勝敗予想をする、ミニイカ娘のポーラちゃんなる
ものが登場した。
帽子に赤丸、ほっぺたに日の丸をペインティングし、白のワンピではなくサムライブルーの代表ユニ仕様のワンピで
現れたミニイカ娘、こいつが元祖の蛸に代わって、勝敗予想をするんだそうだ。

「と言っても、ミニイカ娘は泳げないだろ、どうするんだ」
という俺の思いをお構い無しに、司会者はプールの真ん中にミニイカ娘を無造作に入れた。
当然「ウワップ、プハッ、ゲッショ」と水面で溺れ始めるミニイカ娘。このミニイカ娘が溺れて、水槽に沈んだ先が
日本代表の仕切り側なら日本代表チームの勝利、対戦国側の仕切りに沈んだなら対戦国側の勝利という、他愛もない
趣向のコーナーである。しかし番組は意味不明に大盛り上がりで、「頑張れポーラちゃーん」と、何を頑張るのか良く
分からない声援とか、「ニッポン!ニッポン!」コールが飛び交っている。画面には水面で涙目になって必死にもがく
ミニイカ娘のポーラちゃんが映し出され、ひな壇芸人たちは面白そうにその様子を眺めている。やがて水面で力尽きた
ポーラちゃん、ブクブクと沈み始め、その沈んだ先は日本代表チーム側の仕切りの中だった。
おそらく水槽に仕掛けがあって、日本代表側の仕切りに収まるように水の流れが出来ているのだろう。

「ポーラちゃんの予想は日本代表チームの勝利ですぅ。皆さん拍手ぅ!」
司会の女が空虚にスタジオを盛り上げ、ひな壇芸人たちがやんやの喝采を上げている。水槽はスタジオの袖へ撤去され、
画面の下には「※ミニイカ娘は強靭な生命力を有しておりますので、この程度のことで死ぬことはありません」と言い訳
テロップが流されていた。
「俺の企画書を蹴落とした番組はこれか……」
俺は絶句のあまり、手に持ったビールに口をつけるのも暫し忘れていた。
「しかし明日の対戦相手はシード国だぞ。本当に勝てるのか?予想が外れたら番組的にどう落とし前をつけるつもりだ」
蹴落とされたやっかみで、俺は不謹慎にも明日、日本代表が負けることを願った。
番組は好評を博し、深夜枠にしては上出来の視聴率を稼いだようだという噂を耳にした。
しかし、肝心の試合は、日本代表が惨敗した。


俺はその夜、家に帰るとすぐさまテレビをつけた。例の番組は、予想が外れたことにどんな言い訳をするか、そこが
関心の対象だった。

番組は日本代表の試合回顧を中心に進み、最後に勝敗予想の反省コーナーが始まった。
「それでは、勝敗予想が外れたポーラちゃんには、罰ゲームをやってもらいまーす」
画面には先日のミニイカ娘のポーラちゃんが、ワンピースを脱がされ裸の状態で正座して出てきた。
「脱いでお詫びなんてオチじゃないだろうな」
と思っていると、先日と同じ水槽が出てきた。但し今日は仕切り板などはない。その水槽に先日と同様にミニイカ娘は
放り込まれ、これまた先日と同様に「ウワップ、ウビャッ!」と溺れはじめた。先日までと違うのはここからだった。

「それでは今から、水槽にサメさんを放します。3分間ポーラちゃんが逃げ切れれば、次回予想もポーラちゃんの続投、
逃げ切れられなければポーラちゃんは降板でーす」
司会の女が朗らかに言った。水槽にはどこの水族館から借りてきたのか、仔ザメが1匹放たれた。
「さあポーラちゃん、頑張って!スタジオの皆さんも、ポーラちゃんを応援してね!」
司会の女に促されて、ひな壇芸人たちは半笑いでミニイカ娘のポーラちゃんに声援を送る。
水槽に放たれた仔ザメは準備運動よろしく水槽内を3周泳ぐと、水面のミニイカ娘に気が付き、水中からそっと忍び寄った。
バタつかせているミニイカ娘の脚をパクリと咥え込む。
「ハギュ!?ビャビャ!!ビギャアアアア!!」
ミニイカ娘が悲痛な叫びを上げた。ひな壇芸人はリアクション芸人の秀逸なリアクションを見るのと同様の笑いを起こし、
ポーラちゃんへの声援も更に増してきた。自分の脚を何者かに咬みつかれたのは分かったものの、それが何だか分からず、
四方八方にイカ墨を吐き散らすミニイカ娘、ひな壇芸人は更に笑い転げ、ポーラちゃんに惜しみない拍手。
仔ザメは一先ず咥えた脚を水中に引っ張り込む。水中でもがくミニイカ娘、そこで初めて自分の脚に噛み付いているのが
サメだという事に気付き、「ハワ!ハワワヮヮッ!!」とパニック状態。両手と触手をフルに使って水中でバタバタと
もがき暴れた。ミニイカ娘のこの表情を見て、ひな壇芸人は抱腹絶倒、笑いすぎて声援を送るどころではなくなっている。
仔ザメはミニイカ娘の臍の辺りまで咥え込むと、そこで頭部を左右に振ってミニイカ娘の下半身を食いちぎった。
流石の惨状に「キャー!!」と悲鳴が沸き起こるスタジオ。ここで3分間タイムアップし、水族館から呼ばれたのか、
男性スタッフが慣れた手つきで仔ザメを網で掬い上げた。

失神状態で水槽内を漂うミニイカ娘の上半身、ひな壇芸人も「ここはどう反応すればいいんだ?」という面持ちで
静まり返っていると、司会の女性がお気楽な口調で
「めでたくポーラちゃんは3分間逃げ切りましたので、第2試合の勝敗予想も占ってもらいまーす。ポーラちゃん、おめでとう!!」
と、コーナーを締め括った。スタジオの空気も一変して、明るい拍手と歓声に包まれた。
画面の下には「※ミニイカ娘は強靭な生命力を有しておりますので、この程度のことで死ぬことはありません」と言い訳
テロップが流されていた。

俺は敗北感を噛み殺して、テレビのスイッチを消した。いや、噛み殺していたのは、笑いだったのかもしれない。

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「縁日」

ある年の夏の夜、彼女と二人で縁日の夜店を冷やかしながら見て回っていた。
一つの夜店が目に止まった。
「ミニイカ娘釣り」だと?
見ると、水を満たした金魚すくいの生簀に、イカダや浮き輪のオモチャを浮かべて、それにしがみ付くように、
ペットショップの売れ残りでも払い下げてもらったのだろう、50匹ほどのミニイカ娘が水面を漂っている。
それをオモチャの釣り糸を垂らして釣り上げると言う寸法だ。
日焼けした短髪のオヤジが、俺に誘いの声をかける。
「どうだい、兄さん、やらねえか?」
「ばかばかしい。こんなの入れ食いじゃないか」
ミニイカ娘は泳げない生き物だ。そこへ人間から釣り糸を垂らしてもらえば、我先にその釣り糸に飛びつくに決まってる。
「かと言っても、ミニイカ娘なんか釣っても要らないけどな」
そんなことを彼女に小声で耳打ちしながら見ていると、一人の少年がミニイカ釣りを始めた。彼が釣り糸を垂らすと、
その釣り糸に触手の届くミニイカ娘が全員しがみ付いた。
「ほらね、思ったとおりだ」
俺がドヤ顔しながら見ていると、その釣り糸は群がるミニイカ娘の重しに耐え切れず、ブツリと切れて、ミニイカ娘どもは
ぼちゃりと生簀の中に落ちた。
「はは、ぼうず、残念だったな」
短髪のオヤジが顎に残った無精ひげを撫でながら、勝ち誇ったように笑っていた。
後で知ったことだが、釣り糸はトイレットペーパーを紙縒りにして作った代物だったようだ。

翌年の夏の夜、入籍した彼女、つまり妻と二人で縁日の夜店を冷やかしながら見て回っていた。
一つの夜店が目に止まった。
「ミニイカ娘つかみ」だと?
見ると、大きな透明プラスチックのケースに、ペットショップの売れ残りでも払い下げてもらったのだろう、
200匹ほどのミニイカ娘が所狭しと蠢いている。それをプラスチックケースの黒い天板に開いた穴から腕を入れ、
手探りで捕まえたいだけ捕まえると言う寸法だ。
日焼けした短髪のオヤジが、俺に誘いの声をかける。
「どうだい、兄さん、やらねえか?」
「ばかばかしい。こんなの掴み放題じゃないか」
ペット仕様のミニイカ娘は人を恋しがる生き物だ。黒い天板で上からケースの中を見えにくくしていても、人間が
手を差し伸べれば、自分からその腕にしがみ付いてくるに決まってる。
「かと言っても、ミニイカ娘なんか只でも要らないけどな」
そんなことを妻に小声で耳打ちしながら見ていると、一人の少年がミニイカつかみを始めた。彼が腕を突っ込むと、その腕に無数のミニイカ娘がしがみ付いた。
「ほらね、思ったとおりだ」
俺がドヤ顔しながら見ていると、腕にしがみ付いたミニイカ娘は、少年が腕を抜こうとすると、何故か「ビャービャー!」と
悲鳴のような鳴き声を上げながら、我先に少年の上から飛び降りてしまい、少年の手に握られていた最後の一匹も、少年の指に
咬みついて(勿論、抜歯済みではあるが)逃げてしまった。
「はは、ぼうず、残念だったな」
短髪のオヤジが顎に残った無精ひげを撫でながら、勝ち誇ったように笑っていた。
後で知ったことだが、天板の内側にはサメの絵が描かれていたようだ。ちょうど天板にあけた穴が、サメの開いた
口の中になるように。



その翌年の夏の夜、妻と離縁し、一人で縁日の夜店を冷やかしながら見て回っていた。
一つの夜店が目に止まった。
「ミニイカ娘撃ち」だと?
見ると、回転寿司のようなベルトコンベアの上を、ペットショップの売れ残りでも払い下げてもらったのだろう、
台座に縛り付けられたミニイカ娘が次から次へと送り出されてくる。それを銃で撃って、ベルトコンベアの上から
撃ち落すと言う寸法だ。
日焼けした短髪のオヤジが、俺に誘いの声をかける。
「どうだい、兄さん、やらねえか?」
俺は喜び勇んで撃ちまくった。撃ち落したミニイカ娘は持ち帰れるそうだが、そんなのどうでもいい、離婚の
ゴタゴタで溜まっていた鬱憤を晴らすのに、これほどうってつけの遊戯はないとばかりに、俺は撃ちに撃った。
ベルトコンベアのミニイカ娘たちはどいつもこいつも銃で撃たれた痕が残り、「ピュイイイイイイイ!!」と
悲鳴を上げている。こっちに向かってイカ墨を吐いたり触手を伸ばしたりするやつも中にはいるが、到底届きそうにない。
気が付くと俺の後ろには「早くしろ」「次は俺にやらせろ」と、人の列が出来ていた。
俺達は夢中になって、一晩、順繰り巡りにミニイカ娘撃ち興じた。最後の一人が撃ち終わる頃には、ベルトコンベアを
回っていたミニイカ娘は、いずれもイカ墨に塗れて黒々とした肉塊状態となっていた。
おそらくみんな既に死んでいるだろう。
一晩かけてミニイカ娘を撃ち落した人は一人も居なかったが、皆、満足そうな顔をして祭りの会場を後にした。
俺は夜店のオヤジに声をかけた。
「オヤジ、毎年上手く稼いでるな!!」

(終わり)

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