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東校

台本置場

留置場より…
留置場より、愛をこめて


春輝
千夏
秋穂
冬馬
警察官
美月





(春輝、告白シュミレーション。)

春輝   『美月ちゃん、俺、ずっと美月ちゃんのことが好きだったんだ。もしよかったら、俺と付き合ってください!!』
 
…んー、こんなんでいいのかなぁ。呼び出したのはいいけど、相手はあの美月ちゃんだぜ?あんな可愛い子、俺なんか相手にするわけないし…でも…ここは、びしっと!!男らしく!!

『美月ちゃん、いや、美月。俺は…ずっと君のことを!!』

美月   私がなんだって?

春輝   うわぁああ!み、美月ちゃん!!!!

美月   な、なに?私なんか変なこと言った?

春輝   い、いや別に…

美月   あ、そう?

春輝   うん、全然…はは☆

美月   あ、ごめんね、遅くなっちゃって。

春輝   いや、こっちこそ忙しい中ごめん。

美月   ううん、荷物のほうはもうまとまってたし。本当は…。

春輝   ん?どうかした?

美月   う、ううん。なんでもない!

春輝   そう。…明日、だっけ。出発するの。

美月   んー、今日の夕方には出るかな。

春輝   夕方…。

美月   うん。

春輝   そっ、か。

美月   で、なあに?話って。

春輝   えっ!あ、えーと、その…

美月   ?

(春輝、もじもじする。しばしの間。決心した様子で)

春輝   …あのさ美月ちゃん!

美月   ん?

春輝   俺さ、俺…ずっと、美月ちゃんのこと…!

美月   春輝くん。

春輝   へ?

美月   後ろ…

(美月、春輝の後ろを指さす。警察官、踊りながら登場。)

春・美  …。

春輝   (無視)あのさ、俺、ずっと美月ちゃんのことが…

警察官  まちたまえ!

春輝   なんか来た!!!

警察官  少年、そんな無視しなくてもいいではないか。

春輝   俺、ですか?

警察官  そうそう、君だよ君。

美月   …知り合い?

春輝   まさか!

警察官  探したんだぞ~。

春輝   えっと…すいません。

警察官  なんだね。

春輝   あなた、何者ですか。

警察官  ん?なんだ少年、知りたいのか?

春輝   いや、別に。

警察官  はっはっは、仕方ない。そんなに知りたいなら教えてやろう。俺は…

(春輝、美月とともに立ち去ろうとする。)

警察官  っておい、まちたまえ少年!まだ話は終わってないぞ。

春輝   人違いですって、じゃ。

警察官  待て、違わない。

春輝   あーもう、なんなんですか!俺になんの用ですか?

(警察官、春輝に手錠をかける。)

春・美  え!?

春輝   ちょっ、なんだよこれ!

警察官  私は、こういうものでね。

(警察官、手帳を見せる。)

美月   け、警察?

春輝   警察!?こいつが!?

警察官  瀬田春輝、私は君を逮捕しにきたんだ。

美月   えぇぇ?!!

春輝   はぁぁ?!!

警察官  署までご同行願おうか。

春輝   ちょっと待てよ!俺が何したっていうんだよ!

警察官  いやー、君に窃盗の容疑がかかっていてね。

春・美  窃盗?!

警察官  なんでも、昨日この近くに住む天才子役、芦田愛菜ちゃん(7歳)のぱんつが盗まれたそうだ。

美月   ぱんつ?!

春輝   知るかーーー!!

警察官  嘘つけぃ!昨日の午後7時ごろ、君はこのあたりをうろうろしていたそうじゃないか。目撃情報もあるんだぞ!

美月   うそ…。

春輝   なっ、誤解だって!

警察官  俺の愛菜ちゃんのぱんつを…くっ!このロリコン!

春輝   それはあんただろ!

警察官  じゃあ聞くが、昨日の午後7時に、こんなところでいったい何してたんだ。

(春輝、美月をちらっと見ながら。)

春輝   …か、考え事してたら、そんな時間に…。

警察官  考え事~~~?

春輝   ああ。

警察官  んー、どうも怪しい。

春輝   あんたに言われたくねえ!!

警察官  まあいい。話は署でじっくり聞こうじゃないか。

(警察官、春輝の手を引く。)

春輝   ふざけるな、おい、ちょっと!

美月   春輝くん…

春輝   美月ちゃん誤解だ!俺じゃない!俺は何もやってない!

警察官  つべこべ言わずにこい!

(警察官、春輝のみぞおちを殴る)

春輝   ぐはっ。

美月   !!

(春輝、警察官にひきずられる。)

美月   あっ春輝くん!!

春輝   うっ…

美月   大丈夫だよ。

春輝   え…?

美月   このことは、誰にも言わないから!

春輝   ちがぁ~~~~う!!

(場転する。留置所。千夏、秋穂、冬馬ついている。その3人の前で、舞台そでから警察官と春輝が登場する。)

警察官  着いたぞ。

春輝   …。

警察官  どうだ、なかなかきれいなところだろう。

春輝   …。

警察官  なんだ少年、さっきまでの威勢のよさはどうしたんだね。

春輝   …もう、ダメだよ、俺。

警察官  何がだい?

春輝   さっきの…絶対、ひかれた。

警察官  あの少女にかね?

春輝   あんたがヘンなこと言うから…。

警察官  はっはっは。そりゃひかれるだろう、ぱんつ盗むなんて。

春輝   だから盗んでねえ!

警察官  しかもロリコン。

春輝   違う!俺はスケベだがロリコンじゃない!

警察官  何を言ってるんだね、君は。

春輝   あんたに言われたくないけどな。

警察官  俺のぱんつはどこだ。

春輝   お前のなんか知るか!

警察官  間違えた。俺の愛菜ちゃんのぱんつをどこにやった。

春輝   ぱんつなんて盗んでないって言ってるだろ!

警察官  ぱんつぱんつうるさいな。

春輝   お前だろーーー!

警察官  ふん、まぁいい。

(警察官、春輝を突き飛ばす。)

春輝   いってぇ!

警察官  この留置所で(秋穂の肩をポンポンしながら)ここの仲間と一緒に、ゆっくり頭を冷やすんだな。

春輝   おい、まて!俺にはやらなきゃいけないことがっ!!

警察官  私だって「マルモのおきて」を復習しなければならないんだ。

春輝   知るか!このロリコン!

警察官  ♪マル・マル・モリ・モリみんな食べるよ~

春輝   聞けよ!おーいっ!

(警察官退場。)

春輝   …くそっ!!!

千夏   スケベ…(ボソっ)

秋穂   ロリコン…(ボソっ)

春輝   なんだと!

秋穂   す、すいません!

冬馬   しかもぱんつって。

春輝   はっ?違げぇよバカ!

冬馬   んだとてめえ!やんのかこら。

春輝   い、いえ、なんでもありません。てか、なんであんたらそれを…。

冬馬   あんだけぱんつぱんつ叫んでたじゃねーか。

春輝   なっ!

千夏   留置所中、丸聞こえ。恥ずかしくないの?

春輝   うっ。

秋穂   ご、ごめんなさい、その、聞くつもりは…。

春輝   …。

冬馬   ははっ、まぁそんな落ち込むなって!おんなじ囚人同士、仲良くしようぜ!

春輝   仲良くって…。

千夏   そうそ。これから一緒に生活するんだし。

春輝   は?

千夏   ん?

春輝   …誰が?

冬馬   俺らに決まってんだろ?

春輝   何で!?

千夏   あんた下着ドロで逮捕されたんでしょ?

春輝   やってねぇよ!

秋穂   窃盗罪は確か、10ね…

(警察官、登場。)
警察官  10年以下の懲役または50万円の罰金だ。はっはっは。

春輝   うわっきた!!

警察官  なんだ、そんなに嬉しいのか?(春輝に言いつつ、秋穂にベタベタする)

春輝   いや、全然。

冬馬   帰れ。

警察官  少年たちよ、なかなか傷つくことを言ってくれるじゃないか。ううう(わざとらしく泣きまね、秋穂の肩で)。

冬馬   いいから帰れ。

警察官  …わかったよ。帰ればいいんだろう?ふんっ。

春輝   ガキか!

千夏   キモ。

警察官  では諸君、またすぐ会いに来るから楽しみにしていてくれ。

(秋穂の肩をポン、として立ち上がる。)

春輝   いや、もうこなくていい。

警察官  はっはっは。

(警察官、退場)

春輝   聞けよ。

冬馬   なんなんだ、あのオッサン。

千夏   大丈夫?

秋穂   へ?

千夏   なんかずっとベタベタされてたけど。

秋穂   あ、大丈夫です。慣れっこですから…。

冬馬   あのオッサンと知り合いか?

秋穂   え、ええ、まぁ…。

春輝   うわぁ、大変だね…。

千夏   あ、そだ、ぱんつくん。

春輝   ぱんつじゃねぇ!

千夏   ん?なに、不満?

春輝   当たり前だ!

千夏   じゃあ名前教えてよ。

春輝   は?

千夏   じゃあ ぱんつくんって呼ぶけど?

春輝   いや、やめて。…春輝だよ。

千夏   ふーん。あなたたちは?

秋・冬  へ?

千夏   なーまーえ。

冬馬   あぁ!…ゴホンっ。俺は冬馬。17歳、O型、ただいま彼女募集中☆!

(冬馬、カッコよくポーズ。)

千夏   私は千夏。

冬馬   無視かよ!

千夏   あなたは?

秋穂   あ、秋穂、です。

千夏   よろしくね。

秋穂   あ、はいっ。

冬馬   千夏ちゃんかぁ~可愛い名前じゃん!

( 冬馬、千夏の肩をポン、としようとする。千夏、ナチュラルに殺す)

冬馬  ぶぼ。

千夏   でさ、春輝くん。

冬馬    …。(死んでます)

春輝   なに?

千夏   結局春輝くんはぱんつ盗んだわけ?

春輝   はぁ!?んなわけないだろ!

冬馬   え!マジで!

春輝   俺をなんだと思ってるんだよ。

冬馬   え、変態。

春輝   はぁ!?ふざけんな!

冬馬   んだとこら。

春輝   すいません(ナチュラル土下座)

千夏   …そっか、やってないんだ。

春輝   だからさっきからそういってるだろ!

(警察官、登場。)

警察官  それはどうかな。

春輝   また来たのかよ!いい加減に…

警察官  たった今、物証が見つかったという報告があってな。

春輝   物証!?

警察官  これだ。

(警察官、ぱんつをかかげる。)

春・冬  はぁ?

警察官  ぱんつだ。

春輝   いや、見ればわかる。

警察官  俺の…(咳払い)もとい、愛菜ちゃんのぱんつだ。ふむ。愛菜ちゃんはいちごかぁ。

冬馬   しまえ。変態。

(冬馬、かかげているぱんつをうばう。)

警察官  何をする。返せ。

(警察官、ぱんつを奪い返す。)

冬馬   こんなもん、どっから持ってきたんだよ。

(警察官、ぱんつをポケットにしまう。)

警察官  例の、君がうろついていた公園に落ちていたそうだ。まぁ大方、盗んだのはいいが怖くなって捨てたんだろう。

春輝   俺じゃないって何度も言ってるだろ!!

秋穂   春輝くん、お、おちついて。

警察官  春輝くん、お、おちついて。

春輝   …やばい、こいつ殴りたい。

警察官  ん?公務執行妨害でもっと罪が重くなるぞ?

春輝   …。

警察官  はっはっは。抵抗しても無駄無駄。私には逆らえないのだ。なぁ、秋穂。

千夏   ちょっと。それ、どういう意味よ。

警察官  そのうちわかるさ。はっはっは。じゃあ諸君、また。

(警察官、退場。)

千夏   ねぇ。秋穂ちゃん。

秋穂   …はい。

千夏   あの人とどういう関係なの?

秋穂   …婚約者です。

3人   婚約者!?

春輝   あのロリコンと?

冬馬   あの変態と?

秋穂   お、表向きには!…です。

冬馬   表向き?

千夏   どういうこと?

秋穂   あ、あの人が一方的に、婚約を申し込んでるだけなんです。パトロールとか言って外出するとついて来たり、高価な指輪と…こ、婚姻届、送ってきたり…

千夏   何それ…。

冬馬   ストーカーじゃん!

春輝   立派な犯罪だよ。訴えないの?

秋穂   できません。

春輝   なんで。

秋穂   …あの人は有名な政治家の息子なんです。

春輝   え!

秋穂   下手に逆らわない方がいいですよ。あの人、強引なので…。

冬馬  フザケタ警官だと思ってたら、いままで親の権力で生きてきたってことかよ。

千夏  そうね。逮捕の仕方がめちゃくちゃだと思ったら、そういうこと。

春輝   あ、俺も半ば強引に連れてこられたよ。

冬馬   マジで?実は俺も!

千夏   そうなの?

冬馬   そう、聞いてくれよ!ここに来るちょっと前にさ、ナンパされてる女の子がいたわけ。

(ここから冬馬の過去を寸劇で演る。冬馬→冬馬、春輝→男1、千夏→男2、秋穂→美月、警察官→警察官)

(男1・2、美月をナンパ。)

男1(春輝)   君可愛いね~、どこの高校?

美月(秋穂)   すいません、通してください。

男2(千夏)   そーだなー、俺たちとデートしてくれたら通してあげてもいいけど~?

美月(秋穂)   急いでるんです、あの…。

(冬馬、登場。男2、美月の腕をつかむ)

美月(秋穂)   ちょっ、なにするんですか!

男2(千夏)   いいじゃんちょっとくらい。

美月(秋穂)   やっ!はなして!!

冬馬  待てえええぇぇぇい!

男2(千夏)ん?なんだ?

冬馬 お前ら、女の子が嫌がってるのに、付きまとうのは、マナー違反だぜ?

男1(春輝)なんだこの馬鹿は!?引っ込んでろ!

(冬馬、男1を殴る)

男1(春輝)  ぶは!……ごめんなさ―ぐほぉ!(追い討ち)

男2(千夏)    大丈夫かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

冬馬       怪我ない?

美月(秋穂)   へ…?

男2(千夏)   おいおい、にいちゃん。なにすんだこら。

男1(春輝)   2対1で勝てると思ってんのか?

(冬馬、美月をかばうように立つ。)

冬馬   こいつら……、どうしてこうも堂々とやられ役の台詞が言えるんだ……!

男1(春輝)  なんだと?

冬馬   あ?(拳をあげる)

男1(春輝)   ごめんなさい。

男2(千夏) おい!

冬馬       いやいや、この子怖がってんだろ。やめろよ。

男2(千夏)   てめえに関係ねえだろ!?

冬馬       その制服、東高か?

男2(千夏)   だったらなんだよ。

冬馬       ふーん、あんな進学校にもバカはいるんだな。

男2(千夏)   ざけんな!

(男2、冬馬を殴る。)

冬馬       っ痛ぇな。

男1(春輝)   バカに言われたくねーよ、バーカ!

冬馬       てめえら言わせておけば!!!

(冬馬、男1を殴る蹴る)

男1 (春輝) なんで、俺ばっかり……。

男2 (千夏) てめぇ!(殴る)

冬馬  痛ってぇ。てめえ、よくもやってくれたな!(男1を殴る)

男1 (春輝) 今のおれじゃない……!

冬馬  今のうちに逃げろ!

美月(秋穂)   えっ…?

冬馬       いいから!早く!

(美月、うなずいて足早に退場)
(殴りあい。舞台そでから警察官の声。)

警察官      そこで何をしている!

冬馬      げっサツだ!

警察官、登場。男1・2は優等生のフリをする。

警察官      少年たちよ、ここで何をしているんだね。

男1(春輝)   お巡りさん!助けてください!!

男2(千夏)   ください!!

冬馬       な、なんだこいつら。

警察官      ん、どうした?

男1(春輝)   こ、この人が、僕たちに金出せって殴りかかってきたんです!!

男2(千夏)   きたんです!!

冬馬       はぁぁぁぁぁぁ!?

警察官      ふむ。君、ちょっと署で話を聞かせてもらおう。

冬馬       いやいやいや誤解だって。

男2(千夏)   う、嘘つくな!この不良!!

冬馬       てめえは黙ってろ!

男2(千夏)   うわああああああああんこわいよおおおおおおおおお!

男1(春輝)   てつおおおおおおおおおお!!

警察官      いいから来るんだ。さあ。

冬馬       ちょっ、おい!離せ!この野郎!

(冬馬、警察官に引きずられる。ここで寸劇が終わる。)

冬馬   な?強引だろ?

春輝   俺のときはみぞおち殴られたのに…

冬馬   あのオッサン俺の話全く聞かねえの。ちょっと頭がいいからって東高のやつらの言うことばっか鵜呑みにしてさ。…傷害罪だって~。俺。

秋穂   あの、

冬馬   ん?

秋穂   それって正当防衛になるんじゃ…

冬馬   何それ。

秋穂   えっと、自分や他人を守るために抵抗した時の傷害は、罪に問われないことがあるんです。

冬馬   マジで!うそ!俺でれるの!?

秋穂   え、ええ、たぶん…。

冬馬   やった!いえーい!

千夏   その女の子は?

冬馬   へ?

千夏   その女の子はそのあとどうしたの?

冬馬   なに千夏ちゃん、妬いちゃった?

千夏   いや、ちっとも。

冬馬   またまたー、照れちゃっ…ぐはっ。(殺される)

(千夏、冬馬を殴る。)

千夏   女の子はどうしたの?

冬馬   ごめん、じょ、冗談だって。女の子なら逃がしたぜ。

千夏   …(ため息)。

秋穂   え!

冬馬   えって、その子急いでたみたいだったから…

秋穂   その子がいなかったら正当防衛だって証明できませんよ。

冬馬   ええええええええ!!!

春輝   馬鹿…。

(冬馬、春輝に八つ当たり。)

冬馬   なんで逃がしたあああああああ!

春輝   お前だろ!!

冬馬   ちくしょおおおおおおおおおおお!

3人   …(ため息)。

冬馬   あ?

3人   ?

冬馬   ちょっとまてよ…

秋穂   ん?

冬馬   てことはその女の子さえ見つかれば俺は釈放なのか?

秋穂   そう、です、ね。

冬馬   やった!じゃあいいじゃん、出れるじゃん。俺待つわ。

春輝   え、誰を…

冬馬   その子に決まってんだろ?

春輝   はっ?来るわけないじゃん!!

冬馬   来るって。

春輝   来ないよ。

冬馬   来る!

春輝   来ない!

冬馬   俺はその子を信じる!

春輝   お前のそのプラス思考尊敬するよ…。

冬馬   あざーす!

春輝   いや、褒めてない。

冬馬   ところで千夏ちゃん。

千夏   ん?

冬馬   千夏ちゃんって彼氏いんの?

春輝   なんだよいきなり。

冬馬   バカヤロウ。そこ重要だろ!!

春輝   あ、そう。

冬馬   で、いるの?千夏ちゃん。

千夏   …いた、よ。

冬馬   いた?

千夏   うん。

冬馬   ってことは?

千夏   2週間前に別れた。

冬馬   キタ――――――――!

(冬馬、ガッツポーズ。)

冬馬   千夏ちゃん、そんな男さっさと忘れちゃいなよ。あ、辛かったら胸貸すよ。

千夏   いいよ。別れたこと、後悔してないし。

冬馬   キタキタ―――――――!!

(冬馬、ガッツポーズ。)

千夏   私、元彼の大切なものに火つけたんだ。

冬馬   へ~そうなん…って、え!!!!!

春・秋  火!?

千夏   正確には彼のコレクション、かな。

春輝   なんでそんなこと…

千夏   彼ね、最初は優しくて大人で、いい人だと思ってたの。

冬馬   う、うん。

千夏   でも、付き合って半年くらいたってからかな?彼のコレクションに気が付いたんだ。

冬馬   コレクション?

千夏   うん。

冬馬   え、それって…フィギュアとか?

千夏   そんなのまだ可愛い方よ。

冬馬   …え?

千夏   (ため息)…それにコレクションの大半は盗難品でさ、素敵な人だったからこそ、ショックだったんだ。

冬馬   盗難品って…盗んだってこと?

千夏   そう。やめてって何回も言ったけど、彼、聞こうとしなかったんだ。大事なコレクションでも燃やせば、少しは私の話聞いてくれるんじゃないかって思ったんだけど。

春輝   だから、火をつけたのか?

千夏   まぁ、彼は私よりもコレクションの方が大切だったみたい。話も聞かず、すぐに私を訴えた。

春輝   そりゃ怒るだろ!彼氏の宝物燃やすなんてどうかしてる。

千夏   私はただ聞いてもらいたかっただけなの。私の話を…気持ちを!

春輝   だからってやりすぎだろ!

千夏   やっぱ、わかんないか。

春輝   わかんないね。わかりたくもない。

千夏   彼氏もそんな感じだった。でも、自分の気持ち伝えたから、伝わらなかったけど後悔はしてない。

春輝   わけわかんねぇ…。

千夏   あ、春輝くん。

春輝   …何。

千夏   あんたのことも聞かせてよ。

春輝   何を。

千夏   あんたの、やらなきゃいけないことって何?

春輝   …。

冬馬   やらなきゃいけないこと?

千夏   ほら、ここに来たとき叫んでたでしょ?俺にはやらなきゃいけないことが、って。

冬馬   あぁ、そういえば言ってたな。俺も気になったんだ。

秋穂   わ、私も…。

春輝   …。

千夏   …ねぇ。

春輝   告白、だよ。

3人   告白?

春輝   …好きな子がいたんだ。

千夏   へぇ。

冬馬   え、どんな子?

春輝   明るくて、クラスの人気者の子。美月ちゃん、っていう。

冬馬   ほお。

春輝   特別仲が良かったわけじゃなかったんだけどさ。こんな俺にも笑顔で接してくれる太陽みたいな子なんだ。

秋穂   素敵な人なんでしょうね。

冬馬   春輝にはもったいないな。

秋穂   冬馬さん、そんなこと…

春輝   今日、勇気出してその子を呼び出したんだよ。

冬馬   え!春輝が!?

春輝   ああ。

冬馬   やるじゃねぇか。ヘタレのくせに。

春輝   …でも。

3人   でも?

春輝   失敗したんだ。

冬馬   フラれたのか?

春輝   いや、まだフラれてはいないけど。

冬馬   あ?意味わかんねーよ。

春輝   いきなりあのへんな人が、俺を逮捕しにきたんだよ。告白の最中に。彼女の目の前で。

3人   …。

春輝   まだ彼女に思いを伝えてないんだ。

冬馬   …まぁここを出てからもっかい告ればいいじゃねえか。

春輝   ダメだよ。

冬馬   なんでだよ?さすがに10年も出れないわけないって。

春輝   今日の夕方までじゃないと間に合わないんだよ。

冬馬   だからなんで!

春輝   彼女…引っ越すんだ。九州に。

3人   九州…。

秋穂   ここからだと、遠いですね。

冬馬   でも、会おうと思えば会えない距離じゃなくね?ちゃんと気持ち伝えろよ。

春輝   最初は、そのつもりだったんだ。

冬馬   最初は?

春輝   でも、もういい。

冬馬   なんだよそれ。

春輝   俺、あきらめる。

秋穂   え!?

冬馬   は?おま、何言ってんだよ。

春輝   出れたとしても、おれなんかフられるだけだし。

冬馬   そんなん言ってみなきゃわかんねーだろ!?

春輝   わかるさ!

冬馬   わかんねー!

春輝   わかる!!!

秋穂   ふ、二人とも、落ち着いて。

春輝   俺には無理なんだよ。

秋穂   そんなことないです。

春輝   幼女のぱんつ盗んでもか?

秋穂   でも、春輝さんはやってないじゃないですか。

春輝   それを彼女が信じてくれるとは限らないだろ!?

秋穂   …。

春輝   な?…それに、もともと、俺なんか美月ちゃんの彼氏になれるわけないんだよ。

千夏   なんで?

春輝   なんでって。

千夏   なんで最初からあきらめるの?

春輝   結果なんて目に見えてるだろ。

千夏   逃げてるだけじゃん。

春輝   なにが言いたい。

千夏   気持ち伝えて、気持ち聞いて、傷つくのが怖いだけでしょう?

春輝   …あんたはどうなんだ。気持ち伝えようとして、結果どうなった?

千夏   それは今関係ない!

春輝   自分も相手も傷つけただけじゃんか。だったら最初から何もしない方がいいに決まってる!

千夏   何もしなかったら何も変わらない!このまま言わないで、後悔したままでもいいの?あんたの気持ちはその程度なの!?

春輝   偉そうなこと言うな!!放火魔のくせに!!!

全員   …。

(警察官、登場。)

警察官  やぁ、諸君。どうだね、仲良くやってるかな?

全員   …。

警察官  なんだ、今回はやけに静かだな…。

春輝   …今度は何しに来たんですか。

警察官  そろそろ正式に逮捕する手続きをしようと思ってね。

春輝   そうですか。

警察官  なんだ少年、珍しく言い返さないじゃないか。罪を認める気になったのかね?

春輝   ええ。もう、いいです。

冬馬   おい、春輝!

秋穂   春輝さん!

警察官  やっと自白したか。

冬馬   何言ってんだよお前!!

春輝   もういいんだよ、俺、疲れた。

警察官  秋穂、君はどうする?このままでは私は君も逮捕することになるんだ。

千夏   この子は何もやってないでしょ!?

警察官  何を言っているんだね。秋穂の罪状は結婚詐欺、立派な犯罪だ。

千夏   結婚詐欺?

冬馬   何言ってんだ、あんたがストーカーしてただけじゃねえか!

警察官  ん?何のことかな?

冬馬   てめっ…親のコネ使いやがって、汚えぞ!

警察官  素直に私の婚約を受け入れればいいものを…

千夏   最低ね…。

警察官  なんとでもいいたまえ。

冬馬   くそっ!!

警察官  ふん、まぁ仕方ない、せっかくチャンスを与えたのに、秋穂が何も言い返さないんだ。このまま全員逮捕するとしよう。

冬馬   ちょっとまてよ、俺は正当防衛だ!

警察官  はっはっは。何をわけのわからないことを…。

冬馬   ホントだって!俺は、男に絡まれてる女の子を助けただけなんだよ!!

警察官  女の子なんてどこにもいなかったじゃないか。

冬馬   もう少し待てば、その子絶対来るから!

パピー  話にならないな。

秋穂   私…。

警察官  ん?どうした、秋穂。

秋穂   わ、私は…詐欺なんて、してません!

警察官  おお、ようやく私と婚約する気になったのかい?

秋穂   あなたと婚約もしません!!

警察官  なに。

秋穂   ここから出してください。こんなのもうたくさんよ!!

千夏   秋穂ちゃん…。

警察官  秋穂まで、急にどうしたんだね。まったく…。

秋穂   お願い!ここから出して!

冬馬   出せよ!

千夏   そうよ。この3人は何もしてないわ。

警察官  あああうるさい!みんなまとめて逮捕だ!!!

(美月、その直後に登場。)

警察官  誰だ!!

美月   お、お取込み中失礼しま~す…

警察官  君は…少年と一緒にいた…。

春・冬  あああああああああああああああああああああ!!!!

春輝   美月ちゃん!!

冬馬   あの時の!!

春・冬  え?

美月   あれ!春輝くん?

春輝   なんで?なんで美月ちゃんがここに!?

美月   この子に助けてもらったから。

冬馬   え?

美月   ごめんね、私のせいで逮捕されたって…。誤解、解きにきたんだ。

冬馬   美月ちゃああああああん!

美月   な、なんで私の名前…?

冬馬   俺、嬉しいよありがとおおおおおおおおお!

美月   え?う、うん。

春輝   美月ちゃんに来やすく触るな!

警察官  なんだ。どういうことだ。ということは彼は…

秋穂   正当防衛、ですね。

警察官  嘘だろう…?

秋穂   そして、誤認逮捕ですよ?

警察官  …。

(信二、登場。)

信二   お邪魔しまーす。

警察官  次は誰だね。何しに来た。

信二   へ?あ、ちょっと面会に。

千夏   信二!

冬馬   え?

信二   千夏。

千夏   何しに来たの?文句でもいいに来たわけ?

冬馬   え?えっ!?

信二   千夏…ごめん。

千夏   え…。

信二   俺、千夏の気持ち全然考えてなかった。

冬馬   もしかして…

信二   コレクションは燃えちゃったけど、俺には千夏がいる。俺、やっと気づいたんだ。

千夏   信二…。

信二   もう一度、やり直さないか?

冬馬   元彼えええええええええ!?

千夏   …うん。

冬馬   ええええええええええええ!!!!!

警察官  さあ、用が済んだならお引き取り願えないか。私はこれから逮捕の準備で忙しいんだ。

信二   え?あ、はい。すいません。

警察官  まずは証拠の提出と書類の作成…

(警察官、ポケットからぱんつをとりだす。)

信二   ああああああああああああああああ!!!!!

全員   !?

信二   それは!!

(信二、ぱんつを奪う。)

警察官  ちょ、なにをするんだ。君!

信二   まさしく俺のコレクションNO.103号じゃないかあああああ!!

警察官  は?

春・冬  コレクション!?

千夏   (ため息)…。

秋穂   どういうことですか?あの、千夏さん…

千夏   …ぱんつコレクターなのよ。信二は。

春・冬  えええええええええええええ!!!

春輝  そりゃ、燃やしたくなるわ

信二   これ!探してたんです!よかった~見つかって!!

(信二、ぱんつに頬ずり。一同、唖然。)

信二   刑事さん、ありがとうございます!

警察官  …君。

信二   へ?

警察官  ちょっと話があるんだが。

信二   へ?へ?あ、ちょっと!

(信二、警察官に連れられ退場。千夏、大きなため息。)

千夏   やっぱりなんもわかってない…。

冬馬   え、ちょっと待てよ?

千夏   ん?

冬馬   ってことは、春輝は…。

秋穂   無罪確定!ですね!

千夏   あっ…!そうか、盗んだのは、あいつだもんね!

春輝   え!?

美月   ホント!?

秋穂   ええ。

春輝   俺…出れるの?ここから?

(警察官、登場。)

春輝   あ…。

警察官  …君たちの容疑は晴れた。もう、帰りたまえ。

春輝   …うそ!!

冬馬   やったあーーー!!

美月   よかったぁ。春輝くん、疑い晴れて。

秋穂   本当に、よかったです。

千夏   おめでと。

春輝   …千夏さん。

千夏   ん?

春輝   …さっきは、失礼なこと言ってごめ

千夏   春輝くん。

春輝   え?

千夏   次は春輝くんの番。

春輝   俺の…?

千夏   伝えないの?…気持ち。

春輝   !

(春輝、考え込む。)

冬馬   春輝…。

秋穂   春輝さん…。

千夏   …春輝くん。

春輝   …ありがとう。

(千夏、秋穂、冬馬、うなずく。)

春輝   美月ちゃん。

美月   ん?

春輝   送るよ。もうすぐ出発の時間だろ?

美月   あ、ありがとう。

春輝   じゃ、いこうか。

美月   うん。

(春輝、美月を連れて退場。暗転。)

(場転、春輝と美月が歩いている。)

春輝   …今日は。

美月   ん?

春輝   お見苦しいところをお見せしました…。

美月   あぁ。朝のこと?

春輝   うん。

美月   びっくりしたよ、変な人来たと思ったら逮捕なんて。

春輝   俺が一番びっくりしたって。

美月   ははっ。そうだね。

春輝   ていうか、冬馬の言ってた美少女って美月ちゃんだったのか。

美月   なに、それー?

春輝   不良に絡まれて、ってやつ。

美月   あぁ。んと…冬馬くん?に感謝しなきゃだね。

春輝   喜ぶよ、あいつ。

美月   助かったよ。あの時急いでたし。

春輝   へぇ。なんでまた。

美月   春輝くんに会いたかったから。

春輝   へっ!?

美月   ホントは今日、そのせいで遅れたんだ。

春輝   そ、そっ、か。

美月   で、

春輝   ん?

美月   話って、なに?

春輝   えっ!あの、えーと、その…

美月   ふふっ朝とおんなじだね。

(春輝、照れ臭そうにもじもじする。しばしの間。決心した様子で)

春輝   俺、さ。

美月   うん?

春輝   (咳払い)俺、美月ちゃんのことが、ずっと…!

美月   春輝くん。

春輝   へ?また?

(春輝、後ろを見渡す。美月、笑う。春輝に一歩近づく。)

美月   私もだよ。

(春輝、びっくりする。美月につられて照れ笑い。春輝、美月を見つめて)

春輝   …ありがとう。

                  完

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